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2005年12月12日 (月)

少子高齢化(特に少子化)の対応策は、保育問題の充実しかない??

今回僕は「メディカル・スパ」をテーマにいままでのクリニックをプロデュースしてきましたが、もう一つ興味のあることが少子高齢化社会に対応する何らかのシステムを作ることです。先進国、移民の国アメリカ以外に、少子高齢化対策が成功した国は、事実上スウェーデンとデンマークしかないのです。これらの国は、保育休業制度、保育所の問題、経済的負担軽減措の三点を国を挙げて対応しました。人口減少によって実は国が豊かになるという説もありますが、やはり人口は国力ですよね。日本の医療問題とともに改革が必要な点だと思います。以前に少子高齢化社会について書いた文章があるので、今日はそれをご紹介します。

はじめに

日本の年間出生数は1973年以降減少傾向が続いていて、現在は当時の約半数(2003年54%)にまで減少している。出生率(合計特殊出生率)でみても、最も高かった1971年の2.16から、2003年には4割減の1.29になっている。この数値は長期的に人口を維持できる水準の2.07よりかなり低い。こうした少子化の結果日本の総人口はまもなく減少を始め、これに加えて高度医療の進歩により高齢者の寿命が伸びることで人口高齢化が進行することが予想される。

少子化の原因

年間の出生数は、親となる世代の人口規模と、彼らの子どもの生み方(出生率)によって決まる。少子化過程の出生数の減少には、この両方、つまり親世代の縮小と、子どもの生み方の変化が同時に影響してきたと考えられる。このうち、子どもの生み方が変わった最も大きな要因は、結婚に対する意識が変わったこと(晩婚化・未婚化)にあると考える。
 中でも晩婚化は1970年代半ばの少子化過程のはじめから出生率低下の主な原因となっていると考える。晩婚化は若い年齢層から順に結婚している人の割合を下げ(つまり 未婚化 を引き起こし)、そこでの出産を減少させる。日本の場合、少子化の過程での出生率(合計特殊出生率)低下は、女性20歳代での出産が大幅に減るかたちで起きてきた。これはこの年代で結婚している人が減ったことが主な原因である。代わりに30歳代で出生率は高まっているが、20歳代で減った分を補うまでには至らず、合計特殊出生率は減少し続けている。女性20代後半では、1970~2000年の間に未婚率は18%から54%へと3倍に増え、半分以上が未婚者となった。また、男性30代前半では同じ時期に12%から43%へと3.6倍になった。これらの年齢層では、その分だけ結婚している人が減少し、出産も減少するということになる。また近年では晩婚化が "非婚化(生涯結婚しない人の増加)" につながっていると考えられるので、若い年齢層で失われた結婚・出産の一部は取り戻されないと考えることが出来る。
 女性の晩婚化の理由として、何よりも大きな点は男女雇用機会均等法によって、優秀な女性が仕事を行うようになり女性の経済力が向上したことにあると考える。政府の主催したアンケート調査によると「仕事を持つ女性が増えて、女性の経済力が向上した」、(66.1%)、「独身生活の方が自由である」(54.1%)、「結婚しないことに対する世間のこだわりが少なくなった」(35.5%)、「仕事のためには独身の方が都合がよい」(30.7%)などが理由としてあげられている。一方、男性の晩婚化の理由は、「独身生活の方が自由である」(59.6%)が大きな理由となっている。
これに加えて90年代からは結婚後の出生ペースの低下が低下したことが大きな原因となっている。これには社会・経済の変化全体が関係して、結婚のし方や結婚後の子どもの生み方が変わり、経済変化による働き方や消費生活の変化、男女、家族など社会関係や価値観の変化・多様化が起こったが、そうした変化と従来の慣行、制度との齟齬(そご)が指摘されている。そして、このような出生率の低下は、おおむね先進国に共通した現象であり、社会経済の変化にともなって、もし人々の間に結婚や出産を望んでいるのに、しにくい事情が生じているとすれば、これを取り除く必要があると考える。

少子化による問題点

有史以来、国力とは人口そのものに他ならなかった。まもなく日本の人口は減少を始めるが、労働人口の減少、とりわけ若い労働力の縮小と消費市場の縮小による経済への影響が懸念される。また高齢化が進むことで年金、医療、介護などの社会保障費が増加して、国民の負担が増大することも懸念されている。ただし、地球規模の市場と労働力が認識できるようになりつつある今、経済や生活は一国の人口だけで決まるものではないので、そうした懸念を実現させないための工夫を国、自治体、企業をはじめ国民全体が協力して築いて行けるかどうかが重要な点である。

諸外国における少子化の対応策

出生率の動向と人口の年齢構成を考察すると、米国では、2.03(96年)と、比較的高い水準にある一方で、欧州の6ヶ国はいずれも合計特殊出生率が人口置換水準(2.0強)以上であった時期は過ぎているが、最も高いフランス、デンマーク、イギリスで1.75(フランスは98年、他は96年)、最低のドイツで1.32(96年)と、その水準には幅がある。 欧州の6か国及び米国はいずれも1960年代半ば前後から合計特殊出生率の相当な低下を経験しているが、変化の軌跡を大別すると下記の4つの類型に分けることができる。 第一に 60年代半ばから70年代半ばまでに大きく低下したあと80年前後に若干回復し、その後はかなり緩やかな低下傾向にあるフランス・イギリス型のケース。第二に低下の趨勢が続いてきたドイツ型のケース。第三に60年代から70年代半ばにかけて大きく低下したあと、1.5~1.6程度で比較的安定して推移しているオランダ型のケース。第四に比較的大きな回復を経験しているデンマーク・スウェーデン・アメリカのケースがある。この少子化問題の解決策となりうるデンマーク・スウェーデンでは、低下傾向が始まる前の60年代半ばのピーク時の合計特殊出生率は、それぞれ2.6、2.5程度であった。その後80年代前半まで低下傾向が続いたが、いずれの国も、その後回復基調に転じ、0.5ポイント前後の比較的大きな幅の上昇を経験している。但し、スウェーデンについては、91年以降は再び大幅に低下し、1997年には1.52となっている。アメリカでは、60年代前半の合計特殊出生率3.6以上の水準からその後大きく低下し、76年には1.77と最低水準を経験した。その後は、緩やかな上昇を経験し、89年からは2.0を若干上回る水準を維持している。 

少子高齢化対策の改善策

移民の国であり、人種のモザイクであるアメリカでのモデルは日本に当てはめて考えるわけにはいかないかもしれないが、日本型の少子化問題の解決策となりうるデンマーク・スウェーデンでは、少子化改善における障壁となりうるもの三点についての改善が特になされていると分析する。第一に保育休業制度があげられる。デンマーク・スウェーデンは、いずれも、25~44歳の女性の労働力率が8割程度から9割弱と高くなっているとともに、3歳未満児数に対する社会的な保育サービスで対応している割合が40~50%と高い。また、育児休業制度における休業中の給付額の水準は、「親保険」等により、相対的に高くなっているが、デンマークでは給付率は順次引き下げられてきている。育児休業期間は、デンマークでは13~52週、スウェーデンは合計では18月までであるが子どもが8歳に達するまでの部分休暇取得を権利化しているなど、弾力的に活用できるようにするための配慮がみられる。取得者の約10%(デンマーク)から30%(スウェーデン)が男性と、職場面でも家庭面でも男女共同参画が進んでいるものと見受けられる。 第二に保育の問題がある。社会的な保育サービスの提供形態については、保育所施設において集団的に対応するという方式のほか、子育て中の親が自分の家で他の家庭の子どもも預かるという方式や、家庭に赴いてそこで個別に子どもをみるという方式など、いわゆる個別保育者による保育についても、地方政府が何らかの支援を行っていることが多いことがあげられる。これらの個別保育者については、地方自治体の許認可と研修受講を求めるなど、サービスの質を確保するための方策が講じられている場合が多い。 第三に経済的負担軽減措置が考えられる。経済的負担軽減に関しては、両国とも、税制における児童扶養控除制度はなく、児童手当が支給されている。アメリカは、働き方に関する制度では、育児休業については1年間に12週間の無給休暇の制度が法定されているにとどまる。なお、イギリスと同様、個別の労使交渉等に基づき家族に関する責任と仕事の両立を可能とするための様々な多様な働き方を実施している個別企業の例はみられる。 保育に関しては、全国一律の制度はなく、詳細は把握できていない。 経済的負担への対応に関しては、税制において、児童扶養控除(所得控除)の制度がある。児童手当制度はない。
前述したが、国内人口の低下は国力の低下である。現行の社会保険制度や高齢化対策が事実上崩壊する合計特殊出生率1.29という数値を現実のものとして認識し、一刻も早い対応策を政府は提示すべきであると考える。具体的には男性を含めた保育休業制度の充実。東京都を中心に不足している保育所施設(特に夜間)の充足。国家政策的規模の経済的負担軽減措置を明示し、子供の作りやすい環境を整備する必要がある。わが国の少子化の要因分析を踏まえて大局的に捉えると、自国の置かれた固有の状況の下、総合的な視角の中で個別分野に位置付けを与えることが肝要となる。そのような中で、固定的な性別役割分担の是正をはじめとして、我が国の状況にふさわしい施策を各分野にわたり適切に整備していくことが、結果として子どもを産み育てることと仕事のバランスを確保する上で重要ではないかと考えられる。

参考文献

現代日本の人口問題-統計データによる分析と解説-. 日本統計協会編[人口統計研究会](総務庁統計局監修) 日本統計協会 1995/06

結婚に関する意識 ([第2章 調査結果] Ⅲ) [富士総合研究所] 『 子育てに関する意識調査事業 調査報告書 平成12年度 』 こども未来財団, , 2001/03, pp.32-37

結婚・恋愛も経済取引!? (特集 経済学はこんなに面白い!) 森永卓郎 『 経済セミナー 』 日本評論社, No.543, 2000/04, pp.12-15

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